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MAKEAI JOURNAL / ドメイン知識

AI化する業務の棚卸し|頻度・手間・確認難度で優先順位を決める

MakeAI編集部 公開 2026.09.27 更新 2026.10.20

業務の棚卸し。はじめる仕事を、見極める。MakeAI実務ガイド。

AI化する業務は、作業を小さく書き出し、「試せる条件」を確かめてから、頻度・手間・確認のしやすさで優先順位を決めます。作業時間が長いだけで最優先にせず、使える材料と確認者が揃った一つの仕事を選ぶのが出発点です。

「AIを導入したいが、どの仕事から始めればよいか分からない」。この段階で必要なのは、製品の比較表よりも、自社の仕事と困りごとを並べた業務棚卸表です。この記事では、導入前の候補選びに使う記入欄と、選ぶ・保留する理由の残し方を説明します。

業務棚卸しとは、仕事の内容と負担を見えるようにすること

業務棚卸しは、実際に行っている作業を整理し、担当、発生頻度、所要時間などを把握する作業です。リコージャパンの業務棚卸の解説でも、範囲と記入ルールを決め、担当者への確認を経て一覧を整える進め方が示されています。

AIの導入を考える場合は、そこへ「どんな情報を使うか」「できあがりを誰が確認するか」を加えます。以下の表と選定手順は、その目的に合わせたMakeAIの提案です。全社の業務分析や投資効果の計算を、この一枚で完了させるものではありません。

最初の範囲は、一つの部署・一つの困りごとに絞る

例えば営業部門なら、「報告書を作る負担を減らす」を目的に、報告に関わる作業を洗い出します。「営業をAI化する」と広く書かず、実際に担当者が手を動かす単位まで分けてください。

  • 各担当者から週の活動記録を集める。
  • 記録から実施事項と未解決の課題を拾う。
  • 社内向け報告の下書きへ整える。
  • 数字と内容を確認し、承認された報告を共有する。

この中でも、集める工程が遅いのか、書く工程が重いのかで改善策が変わります。情報が届かない問題に、文章生成の仕組みだけを入れても、材料待ちは残ります。

「営業報告の全工程」と「文章を整える作業」を同じ行に並べて比較しないことも大切です。始まりと終わりを揃え、親の業務とその内訳を別々に合計しないようにします。

業務棚卸表に入れる項目と書き方

下の項目を表計算シートの列にし、一行につき一つの作業を記入します。最初から正確に分からない値は「未測定」「概算」と書き、根拠を後から補える形にします。

項目 書く内容
作業名・範囲 何が届いたら始まり、何ができたら終わるか
担当・利用者 作る人と、成果物を使う人
困りごと 遅い、抜けがある、探し直すなど、変えたい状況
頻度・件数 月に何回発生し、1回に何件扱うか。対象期間も書く
人が手を動かす時間 準備・作成・確認を含む時間と、実測/概算の区別
待ち時間 回答待ち・承認待ち。作業時間とは別に記録
入力・出力 使う材料、その所在、できあがる文書や表
試せる条件 材料の利用許可、元へ戻せる範囲、確認者と照合資料
次の扱い 試行候補/追加確認/別の改善を先行。理由と担当者を添える

時間は、担当者の記憶による概算と、実際に測った値を混ぜずに残します。作業量の申告に加えて実測で確かめる考え方は、Teachme Bizの業務棚卸の解説でも紹介されています。複数人が同時に関わる場合は、会議などの経過時間と延べ作業時間も分けます。

優先順位を付ける前に、試せる条件を確認する

点数を付ける前に、候補ごとに次の三点を確認します。MakeAIでは、未確認の条件を高い業務量で打ち消すような合計点だけの選び方を避け、いったん追加確認へ回すことを提案します。

  1. 材料を使えるか。試行に使う情報が利用ルールに合っているか。分からなければ、担当部署へ確認するか、架空の材料で確かめる範囲に絞ります。
  2. 結果を確定する前に止められるか。下書きの作成までに限定できるか、元データを変更せずに試せるかを確認します。
  3. 確認者が正誤を判断できるか。成果物を原資料や決まった基準と照合でき、その確認を担当する人がいるかを見ます。

例えば、顧客へ直接回答を送る仕事でも、まず「社内で確認する回答案を作る」までなら試行範囲を切り分けられる場合があります。候補から外すだけでなく、任せる工程を狭くできるかを考えます。

条件が揃った候補を、頻度・手間・確認難度で比較する

試せる候補が複数あれば、継続して発生するか、実際に人の手間がかかっているか、できあがりを短い手順で確かめられるかを並べます。確認が難しい仕事は、生成が速くても現場の負担が残りやすいためです。

月間の現状作業量は「月の回数 × 1回あたりの作業時間」で概算できます。ただし、それは現在使っている時間です。AIでその時間をすべて削減できるという計算ではありません。試行後に、材料準備・確認・修正まで含めて比較する必要があります。

次の数字は選び方を説明するための仮定で、実測やMakeAIの導入実績ではありません。どの作業も一人が行い、表の時間には現状の準備と確認を含む設定です。

候補と現状作業量(仮定) 試行条件 今回の判断
A:週次の社内報告を整える
月4回 × 45分=180分
使用を認められた記録があり、下書きを担当者が原文と照合できる 第一候補。範囲を下書き作成までに絞る
B:顧客メールの回答案を作る
月100件 × 8分=800分
個別情報を含み、利用環境の確認が済んでいない 追加確認。利用可能な材料と環境を担当部署へ確認する
C:月次表の件数を合計する
月1回 × 30分=30分
計算規則が決まっており、通常の集計機能で処理できる 既存の集計機能を先に見直す

Bは見かけの作業量が最大ですが、入力条件が未確認です。Aを選ぶ理由は、今ある材料で限定した工程を試し、現場で結果を確かめられるためです。Cも改善対象ですが、生成AIが必要とは限りません。

AIの導入に限らず、作業の廃止・統合・簡素化を考える余地もあります。desknet’s NEOの業務棚卸の解説は、作業の洗い出しに加え、改善の枠組みを使う進め方を紹介しています。自社でも、読まれていない報告なら作成自体を見直すなど、先に解消できる負担がないか確認してください。

選定の結論は、理由と未確認事項まで残す

「Aから始める」とだけ決めると、後からBのほうが効果的ではないかという議論に戻りがちです。選択理由と保留条件を同じメモに残しておきます。

今回選ぶ作業:週次の社内報告の下書き作成
範囲:承認済みの活動記録を受け取ってから、確認用の文案ができるまで
選んだ理由:材料の利用条件と確認者が揃い、元データを変えずに試せる
現状の時間:1回45分(概算。試行前に実測して確かめる)
確認する人:営業企画の担当者
まだ決めていないこと:試行回数、採用する判定基準、運用担当
保留候補:顧客メールの回答案
保留の理由:入力情報を扱う環境の確認が未完了
次の確認:利用可能な環境・情報を管理担当へ確認し、候補表を更新

この例は、業務の選定までのメモです。実際に試す前には、試行の条件や確認方法を別途具体化します。すでに研修を実施した後の利用停滞や効果測定が課題なら、AI研修後の定着・効果測定ガイドで確認できます。

現場への聞き取りは、直近の一回をたどる

「どの仕事が大変ですか」とだけ聞くと、忙しかった時期の印象や、部署によって違う作業の粒度が混ざります。候補を比べるためには、直近に行った一回を題材に、何を受け取り、どこで手が止まり、誰へ渡して終わったかを順に聞きます。申告の時間も、その回の条件と一緒に残してください。

聞くこと 具体的な確認 棚卸表へ残す欄
開始のきっかけ どの資料が届いたら始めたか。全件そろうまで待ったか 入力、開始条件、待ち時間
手を動かした工程 収集、転記、整理、文章化、照合をどの順に行ったか 作業範囲、人の作業時間
やり直した理由 入力不足、数字の修正、承認者の追加依頼のどれか 困りごと、例外の種類
終わりの条件 下書きが出た時点か、承認されて共有した時点か 出力、確認者、完了条件
普段との差 件数が多かった、担当不在、特別案件などがあったか 概算を使う範囲と留意点

その回だけの例外が多いなら、通常の一回と例外の一回を分けて記録します。平均時間だけを先に求めるより、何が増えると確認が重くなるかが見えるようにします。「AIが書く時間を短くする」ことが目的に見えても、実際には入力資料の不備が主な原因かもしれません。

候補を広げても、同じ粒度で並べる

週次報告のAを第一候補にした後、別の部署でも同じ表を使えます。ただし、一つのシステム全体と一枚の文書作成を横並びにしないようにします。次の追加候補は架空の例で、効果の実測値ではありません。時間が分からない候補は、数字を埋めず未測定のまま扱います。

候補作業 入力と完成物 今回の判断と理由
D 研修案内の文案 確定した開催条件→確認用の案内文 候補。条件と文案を照合できるが、発生頻度は未確認
E 契約条件の判断 契約書→可否の結論 範囲を見直す。判断の代行ではなく、担当者向けの確認項目抽出を検討
F 経費の合計 決まった列の表→部門別合計 表計算機能を先行。文章生成が必要な工程は未確認
G 引き継ぎ一覧 短い報告→完了・保留・確認事項の表 候補。原文と照合できるが、報告の版をそろえる必要がある
H 未提出者への催促 提出状況→催促対象と文案 下書きまでに限定。自動送信前に対象と締切を確認する

Eのように判断そのものを任せにくい作業でも、材料の整理までを切り出せる場合があります。反対に、Dのような小さな文案でも、開催条件が毎回未定なら、先に条件を決める仕組みを整える必要があります。作業名から向き不向きを決めず、その仕事の入力と確認条件を見ます。

時間の記録は、手作業と待ちを分ける

一人が30分作業した後、承認を一日待った仕事を「24時間30分」とだけ記録すると、人の手間を減らす施策と承認の流れを変える施策が混ざります。棚卸しでは、手を動かした時間、待った時間、やり直した時間を分けます。全部を秒単位で測る必要はありませんが、推測と実測は区別します。

一回分の記録欄
作業名・実施日:
扱った件数:
入力がそろった時刻:
準備に手を動かした時間:
下書き・集計に手を動かした時間:
確認・修正に手を動かした時間:
承認などを待った時間:
やり直しの理由:
通常と異なる条件:
測った人と、概算で記入した欄:

複数人が同時に確認する作業では、会議の経過時間と延べの人の時間が違います。例えば二人が同じ20分間に確認したなら、経過は20分、二人分の作業は計40分です。棚卸表の全行でどちらを記録するかをそろえます。役割が重なる工程を親業務と子作業の両方へ入れて、合計を二重に数えないようにしてください。

試行後は、同じ候補表へ結果を戻す

第一候補を試した後に別の資料を作り続けると、保留にした理由が忘れられます。元の棚卸表に、試した範囲、入力件数、作成と確認の時間、誤り、次の扱いを追記します。文章生成が速くても、確認者が原文を探す時間が増えたなら、その点を含めて次の判断をします。

例えばAの週次報告で、確認のたびに元メモを探し直した場合、まず文案へ根拠IDを付ける改善が考えられます。Bの利用環境が承認されたなら、保留理由が解消したため候補を再評価します。Cの集計機能だけで困りごとが解消したなら、AI導入へ進めなかったことを失敗と扱う必要はありません。

試行を続けるか判断するときは、「何分になればよいか」だけでなく、必須項目が落ちないこと、確認者が採否を決められること、異常時に元の作業へ戻れることを確認します。基準を試行後の都合で変えないよう、次の回から何を見るかを担当者と合意しておきます。入力と出力の具体的な仕様は、業務自動化の4項目の整理へ引き継ぎます。

棚卸しの成果は、すべての仕事へAIの印を付けることではありません。今試す一つ、先に条件を整えるもの、既存の仕組みで改善するものを分け、担当者が次の作業を始められることです。対象部署が変わった場合も、以前の順位をそのまま当てず、頻度・材料・確認者の条件を更新してください。

よくある質問

すべての業務を調べてから始めるべきですか。

最初の候補を選ぶ目的なら、一つの部署や困りごとから着手できます。ただし、前後の部署へ負担を移す可能性がある工程は、関係者にも確認してください。全社の網羅性を待つことと、周辺への影響を確かめることは別です。

時間を測っていない業務は、候補から外しますか。

外す必要はありません。概算と明記して候補に残し、優先順位を左右しそうな作業から測ります。「忙しい」「時間がかかる」という印象だけの値で、削減効果や予算を確定しないことが大切です。

担当者が「AI化できそうにない」と言う場合はどうしますか。

できない理由を、材料不足、判断の複雑さ、入力ルール、確認負担などへ具体化します。仕事全体を自動化できなくても、記録を整理する工程だけが候補になることはあります。現場の説明を聞かずに、AIに向く・向かないと決めつけないようにします。

どの業務からAIを使うか、相談する

候補は出たものの、優先順位や試す範囲を決めにくい場合は、業務棚卸表を基にご相談ください。MakeAIのAI顧問・伴走支援では、現場の課題を整理し、試す業務と次の行動を一緒に決めます。

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